久々の激辛レビューは、2018年にマイナーチェンジが実施されたマツダのロードスターRF。見た目全然変わらず、(エンジンの)中身だけ変わったロードスターRFは果たしていかに!?
見た目が変わらなくてもエンジンは別物に
158ps/200Nmから、184ps/205Nmへ大幅にパワーアップ。レブリミットが6800rpmから7500rpmに向上した恩恵だが、この700回転がでかい。バルブタイミングを高速化して、バルブスプリングの張力をアップ。高回転でもバルブが付いてくる。スロットルバルブ自体も通路面積を28%拡大。
ピストンの形状を変更して27g軽量化。コンロッドもボルト径の縮小やボルトの長さを短縮し、形状を見直すことで41gの軽量化。さらに、クランクシャフトの形状も見直し、カウンターウエイトを最適配置。
吸気ポートの曲がりを修正することでポート面積を18%拡大。吸気流動をピストン形状とともに見直してタンブル流の強化を行なうことで、耐ノッキング性と熱効率、エミッションも改善。インジェクターも変更して燃料噴射の微粒化も行なっている。
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排気系はほぼ全取っ替え。排気バルブ径の拡大や排気ポートの拡大、さらにはエキゾーストマニホールドも内径を拡大。などなど、幾多の改良を加えて高回転領域でのロスを低減した結果だ。
実際に試乗してみると、違いは歴然で、レッドゾーンまで綺麗にきっちり回る。一定の踏み加減でアクセルを踏んでいくと良く分かるのだが、トルクの出方も谷がなく一定で、付きもかなりいい。
戻し側のコントロール性もよく、思った速度にきっちり合わせるのも簡単。速度感もリニアだから、スピードメーターを見なくてもいいぐらい。速度感が掴みやすいのはSKYACTIV搭載のマツダ車共通の美点なので、驚くことはないのだが、6000rpmあたりで頭打ち感があった変更前と随分違う。
従来のRFとは異なるキャラクター
変更前のRFはGT的な性格が強く、あくせくアクセルを踏むより、ゆったりとクルーズを愉しむのが似合った。少し古典的な高音成分が混じった排気音も、その雰囲気に一役買っていた。だから、走りのエクイップメントてんこ盛りのRSより、SやL-Packageのほうが圧倒的に似合う。
今度のはRSのほうがエンジンの性格に合う。サスペンション周りの変更もあって、スパルタンな印象だったビルシュタイン製のダンパでも、尖った角が取れて、不快な突き上げもほとんど感じなくなってる。変更前のS並みに優しい。低音に振ったレーシーな排気音もRSに似合う。
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速さを求めても裏切られないほどパワーアップしている(パワーウェイトレシオでも86に勝る)から、いっそブレンボを奢ろうかって気になってもおかしくない。胸張って、遅いよ〜( ̄▽ ̄)って言ってたNDロードスターなのに、速くなっちゃった。
ルーフを閉じると、遮音性とも相まって、剛性感が上がるので、本気で走るときはクローズにして、流すときはオープンで…なんて二面性を楽しんでもいい。新旧で性格が全く違うので、今までのRFの雰囲気が自分に合っている人は乗り換えを検討すべきではない。ATなら尚更だ。
もっとパワーや速さがあればという人は、できればRSに試乗してみて自分の求めるロードスター像に合っているか確かめるのが良さそう。スポーツカーの価値は速さでは決まらない。それでも自分にとって気持ちいい速さってのもある。要は合うか合わないか、だ。
ロードスターはロードスター
速さをも手に入れたロードスターRFは、ソフトトップと同じ、アクセルを踏むのが楽しい世界観のクルマになった。シフトするタイミングや動きも自ずとアップテンポになる。ただし、速度域は上がる。
遅きゃ踏め!の1.5と同じようにアクセルを開けたら、人や場合によっては精神的に過剰なスピードになってしまう。シャシには余裕があるから破綻はしないが、怖いと感じる同乗者もいるかもしれない。
全く同じ見た目で、性格が随分違う双子みたいなもので、お付き合いするならスペックよりフィーリングだろうと思う。ロードスターは歴代、そもそもそういう選び方をする人が乗るクルマだ。ひとつ言えるのは、どれに乗っても基本的にロードスターは愉しいということだけだ。
車とぶどうをこよなく愛する男。その異常とも言えるほどの愛の深さ故、その愛がしばしば毒に変わることも。愛車はNAロードスター。