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「安全性能5つ星なら安全」は大間違い!?普通車と軽自動車の違いは?

昨今、盛んに言われるようになった自動車の安全性能。実際、どのような試験が行われているのか、また軽自動車と普通車の安全性能に違いはあるのかを見てみたいと思います。

安全性能試験はどのようなものがあるのか

衝突安全性能試験

【衝突安全性能試験】

現在、日本国内においては独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)が統一のルールにのっとって自動車の安全性能試験を試験しています。またこの試験結果は自動車アセスメントとして公表され、通称JNCAP(Japan New Car Assessment Program)と呼ばれています。

そして、このJNCAPにおいては大きく分けて、衝突安全性能試験などが主の「自動車アセスメント」と自動ブレーキ等の試験を主とした「予防安全性能アセスメント」の2つがあり、その中で更に下記のような様々な項目について試験が行われます。

自動車アセスメントの主な試験内容

【自動車アセスメントの主な試験内容】

また、元々こういった取り組みはアメリカから始まりアメリカで「NCAP」と呼ばれました。それが現在では世界各国においても同様の取り組みがなされるようになり、日本では「JNCAP」、欧州では「EuroNCAP」などの名称がつけられています。

安全性能は何を見ればいいのか

さて、上記のように様々な試験が実施されているJNCAPですが、予防安全性能アセスメントについては長くなってしまうので、今回は省略させていただきます。というのは予防安全機能については、無いよりある方が基本的に良いことですし、試験の数値が高ければ高いほど性能も高いと思われるからです。

それに対し、分かりづらいのが自動車アセスメントの各試験です。試験内容詳細を見てもやたらと数字が多い上に専門用語が多くて、普通はピンとこないような内容が多く並んでいます。唯一イメージ的に分かりやすいのはYouTubeにも公開されている、試験の様子を収めた動画でしょうか。

動画は車種毎に「フルラップ前面衝突試験」「オフセット前面衝突試験」「側面衝突試験」「後面衝突頚部保護性能試験」が公開されており、その車が衝突事故を起こした際にどのような事になるのかが分かるようになっています。

★評価の方法・基準は?

自動車アセスメントの主な試験内容

【自動車アセスメントの主な試験内容】

では、自動車メーカーのCMなどでも強調されている5つ星等の評価はどのような基準になっているのでしょうか。現在は上記のような各試験の結果に対し、それぞれ点数(試験によって満点の点数は異なる)が付けられ、その総合点数を基準に総合評価が決定されます。

2018年9月現在では全試験総合での満点は208点となっており、総合点が何点以上なら星が幾つというようになっています。具体的には基礎点が110.0点で、110.0点未満は★、110.0以上130.0点未満★★、130.0点以上150.0点未満★★★、150.0点以上170.0点未満★★★★、170.0点以上が最高評価の★★★★★となります。

総合評価に隠された落とし穴

事故による車両破損(普通車)

【事故による車両破損(普通車)】

以上の事からお分かりのように、基本的には総合得点が高い方が好ましいのですが、総合評価・得点が高いからと言っても全てにおいて安全とは限りません。極端な事を言えば、5つ星の車の中でも点数に38点もの差が発生する可能性があるので、フルフラップ前面衝突が満点(満点30点)でも側面衝突(満点25点)が0点、そんな車があったとしても他の点数が同じなら同じ5つ星となるわけですね。

そう考えると、同じ5つ星でも170点ちょうどで5つ星の車と208点満点で5つ星の車はかなり安全性能に差がある可能性があります。5段階という結構ざっくりした星評価をしている以上、どこかで線引きをしなければいけないので仕方がないと言えば仕方ないのですが・・・。

普通車と軽自動車の衝突全然性能比較

【普通車と軽自動車の衝突全然性能比較】

しかし、具体的に上の表のように一部試験結果を抜き出してみると、同じ5つ星でもその差は明らかです。表の中で特に大きな差があるものとして、フルフラップ衝突時の下肢部は加わる荷重に10倍以上の差がありますし、側面衝突でも頭部障害値が3倍以上の差となっています。

したがって現時点での星評価は、全体の基準から考えて170点(=5つ星)あれば十分優秀と言えるレベルだよね、ということになります。なお、詳しい評価方法についてはこちらのJNCAPのサイトをご覧いただければと思います。

昔から言われる軽自動車の安全性の真偽は?

事故による車両破損(軽自動車)

【事故による車両破損(軽自動車)】

このように同じ5つ星でも安全性能には結構差があるかもしれない事をお分かりいただいたところで、よく言われる軽の安全性についても考えてみたいと思います。軽自動車販売台数が自動車販売全体の半数を占めている現状では少々タブーともいえるこの話題ですが、個人的には軽に乗っている方には本当の事をぜひ理解していただきたいと思っています。

某販売台数No.1軽のCMなどでも大きく安全性能5つ星が謳われ、全ての車と比較しても安全のような表現がされていますが、果たしてそれは消費者に対して本当に嘘が無いのでしょうか。

確かに総合評価では最高の5つ星という事は事実ですし、あくまでも実施されている試験の内容においては高性能だったという事に嘘はありません。しかし、個人的には本当に十分に安全かと言えば必ずしもそう言えないと考えます。

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理由としては、上記のように5つ星の車同士でも相応に性能差がある可能性があることもそうなのですが、そもそも試験内容が不十分という事が挙げられます。例えば、近年痛ましい重大事故として目にする高速道路での後方からの追突などがありますが、このような追突に関する試験は不十分です。

試験の中に「後面衝突頚部保護性能試験」というのがあるので、そういったケースの事故を想定しての試験のように思いますが、これはあくまでも頚部保護に特化したもの。試験の動画を見ていただければ分かるように、追突された時に前方に飛んでいくスペースがある前提での試験になります。

したがって、軽自動車のような小さな車の後部に追突された際に乗員と追突した車との距離などは一切考慮されていません。小さい軽自動車なら、頚部保護以前に衝撃吸収の役割を果たせるスペースが不十分なので大型トラックにでも突っ込まれたら、保護以前にペチャンコなわけです。

他にも試験では数値になっていないもの

また、他にも試験の数値結果として表れないケースが考えられます。最近多い背の高いハイトタイプの軽などが特にそうなのですが、側突された際などの横転の危険性が非常に高くなっています。

しかし、試験上ではあくまでも衝突時の衝撃を数値化しているだけで、その後の横転による二次被害(横転してシートベルトで首を吊る、横転した際に車両の下敷きになる)などは試験結果に考慮されていません。

参考までに同じような総合点数で同じ4つ星の同メーカーのコンパクトカーと比べてみましょう。

いかがでしょうか、衝突の際の安定感が全然違いますよね。乗員の揺さぶられ方・動きの大きさ、衝撃が加わった際のボディの変形量なども明らかに違います。要はこういったことが昔から言われている「軽自動車は危険」「軽自動車は事故したら死ぬ」みたいに言われる理由なのです。

ちなみに軽自動車規格というのは世界には無い日本独自のものになるので、スマホで言われるガラパゴス商品と同様で日本での規格・基準しか満たしていません。したがって、日本国内仕様のまま日本以外の安全規格で試験される事も基本的には無いので、世界基準で試験されるという客観性が不足している点も否めません。

ただ、なんでもかんでも軽が普通車に劣るわけではありません。あくまでも同じ年式程度の軽と普通車を比べた場合と考えていただけばよいでしょう。一昔前の普通車と比べたら、最新の軽の方が安全というケースももちろんあるかと思います。

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ただし、軽の方が軽い、サイズが小さい、車外の空間と搭乗者の距離が近いという点において、大きめの車よりかなり不利な点は否定できません。実際、(財)交通事故総合分析センターが出している交通事故統計年報のデータによると、車両相互事故では普通車よりも軽自動車のほうが1.29倍死亡率が高いことがデータにも表れています。

このように維持費が安いからと言って、年数万円のために万が一の事故で命を落とす可能性が少なからず高いということはぜひ理解いただいた方がよいのではないでしょうか。それを踏まえた上で、軽に乗るという選択ももちろんありですが、様々な事を知った上で選択する事が重要だと思うのです。

随分長くなってしまったので今回はこの辺までにしたいと思いますが、皆さんもぜひご自分の愛車の安全性能試験の結果を下記サイトで見てみてはいかがでしょうか?

>>「JNCAP」WEBサイト
>>「EuroNCAP」WEBサイト

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