維持費が安いということで根強い人気の軽自動車。確かに維持費のみで見ると普通車よりも安く済むことは間違いないのですが、車両価格まで含めた総費用で見ると本当に軽はお得なのでしょうか。今回は人気のコンパクトカーとその費用を比較してみたいと思います。
維持費が安いからと買う軽自動車
維持費が安いということで相変わらず軽自動車の人気は根強いものがあります。新車の乗用車(普通乗用車+軽乗用車)販売台数に対しても2017年度で軽のシェアは約1/3となっており、地方によっては50~60%が軽というような地方もあります。
そんな中、わが職場でも当然軽自動車を新車購入する方がいるのですが、話を聞いてみると購入費用はなんと200万超とのこと。まあ、各種安全装備などが装着されて今の軽が高いのは知っていましたが、身近でそういう話を聞くと本当に軽に200万出す人がいるんだと実感。
そして200万もする軽を買った理由を聞いてみると予想通り「維持費が安いから」とのこと。でも、車両200万って普通車で考えても一昔前ならちょっとした車だし、中古車だったら結構いい車買えますよ?と思うわけです。
そんな「お金ないから軽を買う」論に懐疑的な自分としては「これはちょっと確認してみにゃならん!」ということで人気コンパクトカーを中心に年間維持費や車両価格まで含めた総費用で一体どれくらいの差が出るのかをシミュレーションしてみることにしました。
軽、コンパクト、輸入中古で比較!
そんなわけで、今回比較車種として選んだのは軽自動車人気トップクラスの「ホンダ N-WGN」、同じくコンパクトカーで人気の高い「トヨタ アクア」と「マツダ デミオ」、そして中古で高年式・低走行でも激安の「BMW 118i」。果たして5年、10年所有した際にどれくらいの費用の差が発生するのでしょうか。
なお、比較のための諸条件としては基本的に下記を基準としています。
・車両価格は諸費用込みの乗り出し価格
※新車はメーカーサイトの見積機能を使用
・中古車は大手中古車検索サイトの最安クラス
・車検費用は大手車検業者の基本プラン料金(諸税+基本手数料)
※故障は運任せ、基本的には発生しない前提(笑)
・燃費は燃費比較サイトのユーザー投稿データ
※レギュラー140円、ハイオク152円、軽油125円で計算
・タイヤは大手通販サイトで同一銘柄のタイヤ4本の価格
※総距離に応じて3年おきか4年おきに交換
・オイル交換は年2回(デミオ¥4,000/回、他¥2,000/回)
・保険は大手ネット保険の見積と等級割引率を適用
※新規契約、6等級スタート、本人限定、30歳以上限定、車両保険エコノミー(車対車限定)、車両保険補償額は計算の簡易化のために1年目のまま据え置いているため、実際の保険料より2年目以降が少々高め
鉄板人気の「ホンダ N-WGN」
お高い軽自動車の筆頭として選んだのがこちら。実際に人気があって乗り出し総費用200万円を超えても売れているであろうことからチョイスしました。
【計算の基本条件】
車名・グレード | N-WGN Custom G・L Honda SENSING/4WD | ||
価格 | ¥2,095,000 | 自動車税 | ¥10,800 |
燃費 | 17.4km/L | タイヤサイズ | 155/65R14 |
燃料費/1万km | ¥80,460 | タイヤ代/4本 | ¥18,400 |
初年度保険料(年走行1万km) | ¥57,230 | オプション | ナビ、マット等 |
コンパクトカーの代表格「トヨタ アクア」
こちらも言わずと知れたコンパクトカーでトップクラスの販売台数を誇る車。ハイブリッドであるので燃費では軽自動車をも凌ぎます。
【計算の基本条件】
車名・グレード | アクア L(FF) | ||
価格 | ¥2,019,000 | 自動車税 | ¥34,500 |
燃費 | 22.9km/L | タイヤサイズ | 185/60R16 |
燃料費/1万km | ¥61,135 | タイヤ代/4本 | ¥39,200 |
初年度保険料(年走行1万km) | ¥75,720 | オプション | ナビ、マット等 |
ディーゼルで燃料費低減「マツダ デミオ」
アクアと同じコンパクトクラスからはもう一台マツダのデミをチョイス。理由はディーゼルによる燃料費の節約が少なからず期待できそうなので。
【計算の基本条件】
車名・グレード | デミオ XD(FF) | ||
価格 | ¥2,066,000 | 自動車税 | ¥34,500 |
燃費 | 18.8km/L | タイヤサイズ | 185/65R15 |
燃料費/1万km | ¥66,489 | タイヤ代/4本 | ¥27,200 |
初年度保険料(年走行1万km) | ¥66,550 | オプション | ナビ、バックカメラ等 |
輸入車でも激安「BMW 118i」
そして最後はさすがに新車では比較対象にならないものの、中古であれば比較的高年式・低走行でも激安のBMW1シリーズ。高級車の代表格であるBMWでも激安中古なら総費用で軽自動車に迫れるのか!?(画像は2016年モデル)
【計算の基本条件】
車名・グレード | BMW 118i(2015年式中古/走行3万km) | ||
価格 | 約¥1,500,000 | 自動車税 | ¥34,500 |
燃費 | 10.6km/L | タイヤサイズ | 205/55R16 |
燃料費/1万km | ¥143,396 | タイヤ代/4本 | ¥39,600 |
初年度保険料(年走行1万km) | ¥87,750 | オプション | ナビ、バックカメラ等 |
維持費・総費用の比較結果はいかに!?
では、以上の条件にて計算した結果がこちら!
まずは年1万km走行した際の年間維持費をグラフにしたものです。
【年1万km走行時の年間維持費】
軽の維持費が安いという通り、年単位の維持費は軽自動車が他の3車種を全て下回っています。これはやはり自動車税で2万円以上安い点、タイヤなどの消耗品が安い点などが最も影響しています。
しかし、燃料費ではハイブリッドや燃料単価がリッター当たり15円も安いディーゼルであるデミオよりも高いという結果になっています。118iはハイオクの上に燃費もあまりよくないことにより燃料費で大きく出費してしまう形です。
では、ここに車両購入価格も含めて累積の総費用を見てみるとどうでしょうか。それがこちら。
新車の3台は新車車両価格が似たりよったりですので、スタート時の総費用はほぼ一緒ですが、上記のようにその後の自動車税や消耗品費の差分でじわじわと総費用に差がついていきます。参考までに5年目と10年目における軽とその他の累積総費用の差は以下のようになります。
【累積総費用の差】
この差を大きいと考えるか小さいと考えるかは個人の判断によりますが、軽自動車とコンパクトカーの出費の差は月で1000円強から~2000円強ということになります。
そして、恐らく世間一般的には比較するまでもないと思われたBMWの中古。燃費の悪さからランニング費用はかかってしまうものの、購入時の車両価格を大きく抑えているため、その貯金分を食いつぶすまでは軽よりも総費用は安いという結果になっています。
今回の条件で5年程度乗るだけであれば、なんとBMWの程度のいい中古に乗っても軽と総費用は変わらないということが分かります。ただ、何年乗るかや下取り・買取価格の考慮をしていないので、それを考えるとBMWは恐らく不利になりますが・・・。
なお、年間走行距離を5,000kmに減らすと下記のようになり、燃費の悪いBMWは7年目まで総費用が軽と差がないという結果になっています。
条件次第では必ずしも軽が得とは言えない
以上のような結果になりましたが、費用以外の部分でもメリットデメリットはあるかと思います。まずは今回の車種でいえば、N-WGNは車内空間の広さと小さいサイズによる取り回しの良さはメリットです。
逆にデメリットは軽自動車の安全性の不足と性能不足。以前の記事でも取り上げたように軽自動車は事故時の安全性は平均して普通車に劣ります。また乗車定員も4名ですし、高速道路走行などにおいては馬力やトルクなど性能面で劣る軽自動車ではストレスを感じる場面もあるかと思います。
したがって、個人の考え方にもよりますが月1000円~2000円の出費増で安全性や快適性が高まるならその方がいいという方もいるでしょうし、安全性が劣ろうが100円でも毎月の出費を抑えたい人もいるでしょう。乗り換えまでの年数や走行距離によっても差額は変わってきます。年をとって保険料が下がればより差額も小さくなったりもします。
ですので、個人的にはそういったことをよく理解した上で、ぜひ車選びをしていただきたいと思います。何に価値観を見出すかによって当然ベストの選択肢は変わります。単純に「軽自動車は安い」と考えていると、人によっては軽以外で得られるメリットを知らずに損をしているかもしれませんね。
車の中でもスーパーカーを筆頭にスポーツ系や輸入車が特に大好きで、欲しいクルマは数え切れず。残りの人生であとどれくらいの数の車に乗れるだろうかと考えると、色々と悩みが尽きません・・・。