前回の記事では主にエクステリアとインテリアの前席部分に関してインプレさせていただいたが、今回は主にリアシート周りについてインプレをお届けしたい。
ミニバンは世界的に見てオワコンだから、ピープルムーバーはSUV。所有満足度が高くタイムレスな持続性があるデザインと、ドライバーが単なる運転手にならないクルマ、走って愉しいクルマを成立させる。CX-9でノウハウはあるにせよ、ミニバン一辺倒の日本で市場を作るというチャレンジは、勇気のいる決断だ。
多人数を快適に移動させるには、シートアレンジが何十通りあろうが関係ない。シート自体の造りとパッケージがきちんと構築出来ているか、クルマは人を載せて動く乗り物だと言うイメージが開発者にあるかが重要。回転対座はもちろん論外だが、ショールームに飾っておくことを目的に作ったミニバンは数知れない。CX-8はどうか?
フロントシートに続いてセカンドシートの印象
7人乗りのベンチシート、6人乗りのキャプテンシート共に2列目が最も居心地が良い。高めのシート位置なので、視界も広く、脚を投げ出さなくて済むため、疲労も少ないだろう。特にキャプテンシートはフロントシート同等のサイズと形状で、掛け心地がバツグンにいい。
マツダではMPVのスーパーリラックスシート、ほかのメーカーのミニバンでは未だに寝そべった姿勢で座らせるセカンドシートがあるが、もはや時代遅れ。頸椎に多大な負担を掛けて、天井を見上げて寝そべる意味がわからん。ましてや、写真映りを気にして、広く見せるためにシートが小さいクルマが未だにあること自体、メーカーの良心を疑う。尚且つ、シートベルトが適切に締められないクルマも多く、安全面でもおススメし兼ねる。
CX-8のセカンドシートは、アップライトに座らせる設計で、フロントシート下への足入れもいいから、シート位置を一番後ろに下げなくても、充分快適に過ごせる。反面、ジュニアシート卒業直後ぐらいのお子さんは足がつかない。
和製ミニバンが想定するファミリー層よりも、年齢が上という感じ。大人が正しい姿勢で座れることを想定している。頭上も充分な余裕があり、かと言って空気を運んで(無駄な空間があること)もいない。
シートの取付もシートレールがフロア埋込ってこともあって、ガッチリしている。強く揺すってもグネグネたわむ感じがない。シート剛性が弱いと、クルマの揺れとの間に遅れが生じ、疲労やクルマ酔いの原因になる。地味だが重要なポイント。
皆が気になるサードシート
サードシートは先に述べたように背もたれも高く、座面の長さもあり、薄くはあるものの立体断面形状でしっかり作ってる。かつシートの取付金具に異様に頑丈そうなのを使って、背もたれの角度調整もないから、クルマの揺れでグネグネ動いて疲労を増幅することもなさそう。補助イスの域ではない。
前述のとおりセカンドシートは中間位置でも足元に余裕があり、結果サードシート使用時の空間はちゃんと確保出来る。もちろん広くはないが、苦痛を味わうほどではない。ただし、自分の身長では頭が天井に付くし、膝裏はシートに触れもしない。小柄な方向けなのは確かだが、せめてシート前端の角度が変えられれば、快適性はグッと良くなったはず。シート自体の剛性との兼合いもあるだろうが、ここは一考を望みたい。
シートアレンジは到ってシンプル。倒すだけ。サードシートのヘッドレストは、充分なサイズと引き換えに、後方視界を妨げる。サードシート丸ごと倒さないまでも、未使用時に死角を作っておくことはない。荷室のレバーまたはヒモを一段引っ張ると、ヘッドレストだけを倒せる。これは良い工夫。ただ、機能的に差はなくても、レバー(レザーシート≒L-Package)とヒモの落差が…全車レバーにしようよ。
カーゴルームは3列全部使うとさして広くはない。サブトランクも深さはあるが、BOSEサウンドシステム装着車の場合、サブウーハーが鎮座してしまう。基本的にCX-8はピープルムーバーだ。大量の荷物をフル乗車で載せることは想定していない。もちろんサードシートを畳めば(例のレバーまたはヒモを引けばワンタッチで収納される)かなりの広さになるし、セカンドシートまで畳めば身体を伸ばして車中泊すらできる。
次回は試乗編。運転はしたが、後席での試乗がまだなので、機会を改めて。
車とぶどうをこよなく愛する男。その異常とも言えるほどの愛の深さ故、その愛がしばしば毒に変わることも。愛車はNAロードスター。