今回は、巷で大変噂になっているスズキの新型ジムニー。プロアマ問わず絶賛されているこの車の実力は如何に!?
愛され続けているジムニー
道具はシンプルで考え抜かれたものほど手に馴染み、愛着が湧く。その道具が、もしかしたら生死を分けるかもしれないとなれば、尚更シンプルなほうが良い。
商用車を別にすれば、ジムニーは歴代、道具として世界中で愛され続けてきた稀有なクルマの一台だ。新型ジムニーのカタログにはその半世紀にもなる歴史が誇らし気に掲載されている。世界的に類を見ないミニマムかつ本格的な四輪駆動車は、過酷な環境でも信頼出来る相棒として、はたまたその走破性は世界中の不整地路や自然の中での生活必需品として活躍しているし、昨今のSUVブームも手伝って、街中でもタフなイメージアイテムとしても乗られている。
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かつて四駆(RV)ブームの頃には、パジェロミニ&ジュニア・io、テリオスキッド&テリオスといったライバルもあったが、それらはジムニーほど受け容れられずに姿を消した。何故か?かたちだけを真似しても、本質を押さえていなければ、ホンモノとは認められないということではないだろうか。
ジムニーを本格的オフローダー足らしめているのは、堅牢なラダーフレームやリジットアクスル、機械式のパートタイム4WD&副変速機による基本構造にある。また、オフロードでの高い走破性を維持するための対障害角度などのサスディメンションや対地クリアランス、確実に地面を捉え続ける「長い脚」、見切りの良いスタイルなども、ジムニーの遺伝子だろう。このDNA、つまり本質が引き継がれている限り、ジムニーは安泰だと言える。
いいぞ、新型ジムニー!
新型ジムニー。結論から言うと、かなりすごくとても良い !
ついでに言うと、今回訪れたディーラーさんでは試乗車にあえてマニュアルのクルマを用意しているところもジムニーを求める層の志向を良くわかっている。
ご存知のとおりジムニーシリーズには、軽(ジムニー)と、普通車(ジムニーシエラ)の2つがある。ラダーフレームはじめ、基本的な構造は共通で、エンジンやバンパー&オーバーフェンダー、タイヤ&ホイールが異なる(もちろんトレッドを拡げるためにサスペンションもリーディング/トレーリングアーム以外は総て別パーツ)。ラダーフレームに8箇所のブッシュを介して(文字通り)載せられるキャビンは全く同じものを使っており、乗り込んでしまえばどちらか判別するのは難しい。
背は高めで、フロアも高く、シート高もあるから、流行りのSUVのように優雅に乗り込むのは不可能。ハンドルを掴んでドカドカ上がり込み、どかっとシートに腰をおろす。ピラーが立っていて、ドアも大きく開くから、乗降りはとてもスムーズだ。助手席側にはがっちりしたアシストグリップがダッシュボードに付いている。
ダッシュボード、インパネは水平基調で、乗用車的だった先代に較べると、いい意味で先祖返りして、武骨かつシンプル。前述のアシストグリップやドアグリップ、メータークラスターのねじを剥き出しにしているのも、あざといが、狙い通りタフなイメージを演出していて、しっくりくる。
内装で唯一の加飾は左右エアベントのシルバーリングのみ。質感にこだわったのも、メータークラスターのヘアライン加工ぐらいで、至って質実剛健を地で行く内装で潔い。メーターも見やすく、オーディオのスペースも一番高い位置に配置し、視認性は上々。スイッチ類も大きく、主要な操作は手袋をしていても行えるよう配慮されている。
今日はわざと畑で履いているブーツで行った。冬場スノーブーツで運転する人も多いだろうから、この程度でペダル操作が出来なければお話にならない。狭いスペースだから広々とは言えないし、マニュアル車の場合フットレストすらないが、ペダルレイアウトは悪くない。アクセルペダルが異様に細い理由を訊いたが、新人の営業くんは答えてくれなかった。
シートはサイズも割とゆったりしていて、座面のクッションも厚く、腰回りのサポートも良い。ハイトアジャスターがないし、ステアリングの調整もチルトのみなので自ずとポジションは制限されるが、俺の場合は全く問題なかった。シート前端でペダル操作が阻害されることもない。アップライトなポジションを強要するのはクルマの性格にも合っている。ダラけた姿勢で運転するなということだ。
後部座席もチェック
後部座席にも座ってみる。前席を適切な位置にしてもらうと、狭くはあるが我慢する程ではない空間が残る。フロントシート下に爪先も入れられるから、若干体育座りでゆったりとはいかないが、文句言われる程ではなく座って貰えそうだ。四角いボディの恩恵で、頭上も圧迫感がないし、ヘッドレストもきちんと後頭部まで高さを上げられる。
ただし、一番ベーシックなグレードでは、後席ヘッドレストが装着されないのが良くない。ヘッドレストは全車標準装備すべきだ。後席のシートベルトはキーなどでロックを解除すると、外してピラーに止めておける。荷物を載せるときに邪魔にならない配慮だ。それが理由でシートベルトを装着しないのは困るね〜と訊いたら、ちゃんとワーニングが出るそうだ。
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後席を使った場合のカーゴスペースは想像通りほとんどないに等しいが、畳むと結構広大で平らなスペースが出現する。プラスチックのパネルが張ってあるので、手荒く荷物を載せても、濡れた荷物を載せても、まあ気にならないような感じだ。
背中にスペアタイヤを装着していることから必然的に横開きのバックドアは、テールランプがバンパーに埋め込まれたおかげで間口が広い。ドアを開けると全開までのクリック感もあるし、少しぐらいの強風なら、勝手に閉じてしまうこともないだろう。ラッチの合いも良く、ヒンジの剛性もきちんと確保してある。経年劣化でバックドアが下がってしまうこともはなさそうだ。
軽ながらも優れたパッケージデザイン
ひと回りクルマ全体を観察すると、軽自動車の制約の中でも、きちんとパッケージを構築していることがわかるデザインで、短いオーバーハングや、立てたピラー、真っ直ぐなボンネットはもとより、チェーン装着がしやすいように四角く切ったホイールアーチや、左右を斜めにカットしたバンパー、屋根をぐるっと取り囲むレインモールなど、総てが合理的だ。
丸いヘッドライトや、Aピラー付け根のエアアウトレット風の二本の凹みは、2代目のアイコンを拝借したものだが、ノスタルジーに浸っているわけではなく、きちんと現代的に解釈して落とし込んでいる。ひとことで言えば実に見事なデザインだ。
機能美というとなにか無機質な感じを受けるが、新型ジムニーの場合は機能美をワクワク感に転換できているのが、またすごい。歴代が培ったブランドの裏付けがあるにせよ、ちょっと勘違いしたリーダーが音頭をとるだけで、呆気なくブランドが崩壊する例は挙げたらきりがない。ジムニーかくあるべし!と、スズキ全社でブレずに開発されたことがよくわかる。
もう、この時点で名車の予感しかしないのだが、クルマは運転してなんぼ。実際どうだったかは、先に書いたとおり。書きたいことが多過ぎるので、また次の機会があったらお付き合いいただきたい。
車とぶどうをこよなく愛する男。その異常とも言えるほどの愛の深さ故、その愛がしばしば毒に変わることも。愛車はNAロードスター。