日産が約30年前の86年9月のサニー以来となる車名別販売ランキングで1位を獲得した。ノートである。
その牽引役がe-POWERであることは間違いない。FFの約8割がe-POWERであるという。実は発売後さほど間をおかずに試乗していたので、遅ればせながらレビューを。あくまで個人の感想です。気になった方はディーラーで試乗を。
ハイブリッド?いえいえ電気自動車です
最大の興味はもちろんパワーユニット。ノートe-POWERは、リーフのEVコンポーネントをノートに載せ、バッテリーを小さくする替わりにエンジンを搭載する。電源ソケットを廃した代わりにガソリンを給油。エンジンはあくまで発電機で駆動には一切関わらない。
エンジンで発電した電気をバッテリーに溜め込み(もしくは直接)、モーターでタイヤを駆動する。この形式のパワートレインを「シリーズ・ハイブリッド」という。メリットとして、エンジンが駆動から切り離されているので、一番効率の良い回転、出力を維持できること。いわゆる「燃費の目玉」という領域だ。
エンジンとモーターが切り離されているのため、エンジンを休止するだけで完全な電気自動車として振る舞う。日産が「ハイブリッド」だと言わず「電気自動車(EV)」と主張する所以だ。リーフは充電の心配があり、長距離の移動に尻込みする人も多いと聞く。その点e-POWERなら、普通のクルマと同じくガソリンを給油すれば済む。
EVに乗ってみたいけれど不安があるなんて人は真っ先に飛びつくだろう。日産がリーフと同じEVと言い張るのは、実にうまい戦略だと思う。
屋上遊園地の電動カート
結論から言うと、非常に面白い。
回生ブレーキが強力なので、アクセルペダルだけで発進から停止までできる。モーターとの協調もよく煮詰めていて、思った以上に加速したりなんてことはなく、スピードのコントロールはガソリンエンジン車のノートよりはるかに楽。もちろんスタートから最大トルク(最高出力109馬力、最大トルク25.9kgm)を出すモーターだけに力不足は全く感じないし、変速機が存在しないので、CVTのようなフィーリングの悪さやもたつきも全くない。
慣れが必要なのはアクセルの戻し側。アクセルを完全に戻すとかなり強めにブレーキをかけたようになる。有り体に言えば、ほらあれだ、昔デパートの屋上遊園地とかにあった電動カートみたいなもん。これは走行モードの切り替えで多少調整できるし、回生量をかなり減らしてエンジンブレーキ程度に落とすことも可能。馴れや好みで選ぶといいだろう。
細かくアクセルコントロールができる人なら、ブレーキペダルに全く触れないで運転できる。逆にドライビングポジションが間違っていたり、アクセルワークが雑な人は同乗者がたまったもんじゃないくらいギクシャクしそう。
先日、前を走っていたノートが、発進から停車まで、ほとんどブレーキランプが点かないままだった。アクセルを完全に戻しすなどして、強めの回生がかかるときにはブレーキランプが点くという説明だったので、うまい人はこんな芸当もできるようになるのかと感心した。前のクルマがそういう運転していても、後ろから見て加減速がわかりやすいので、危険や苛立ちを感じることはなかった。むしろ安心してついていける。逆にブレーキランプがしょっちゅう点くノートは要注意。いつ最大Gの回生&フットブレーキのコンボを喰らうかわからない。
スポンサーリンク
クルマとしての出来は?
ヒーターを使用しているとエンジンがかかる頻度が増える。電気自動車は暖房に大きな電力を使うので、エンジンの熱をヒーターコアに廻すためでもあるらしい。それでもエンジンは極力主張しないように遮音には気を使っている。全く無音とはいかないので始動すればすぐわかるけど。
リーフで気になった操作系の重さの不統一感はほとんどない。リーフはハンドルだけがやたらと軽く、ペダルは重めで、スイッチ類も余った部品の寄せ集めかと思うほどタッチがバラバラだった。ノートは至ってまとも。訊けばリーフとほぼ同時期に開発はスタートしていたとのことで、細かいチューニングができているのも納得。カメラを使ったルームミラーも最初は違和感があったがすぐ慣れる。夜間はむしろ見やすいそうだ。
ハンドリングは普通に乗る分には素直。強引な運転の場合は…していないのでわかりません。ただしステアリングインフォメーションと接地感はやや希薄で、ロール剛性はTBAなのにリア側がかなり弱いので、無理できるマージンは少ないように思う。足として普通に乗る分には欠点らしい欠点にはならない…といいなあ。
試乗は営業さんの説明を訊きながら、10kmぐらい。燃費は23.1km/Lだった。チョイ乗りとしては優秀だと思うが、燃料代だとデミオのディーゼルに負けるかもしれない。
では、次のページではちょっとした欠点等についても述べてみたい。
車とぶどうをこよなく愛する男。その異常とも言えるほどの愛の深さ故、その愛がしばしば毒に変わることも。愛車はNAロードスター。